2014年11月24日月曜日

君と僕と東京ときのこ帝国

(先週の「東京暮らし、どうですか」の深堀りバージョン。例によってただの音楽ブログ。)

フィッシュマンズの浮遊感漂うシティ・ポップ。
椎名林檎が叫んだ新宿という街。
サカナクションと上京の現実。
そして、きのこ帝国が歌う君と僕と東京。


時代を越えて若い世代の憂鬱なハートを掴み続ける、東京ソング。
わたくし最近新たにハートを掴まれた、2007年デビューのオルタナティヴ・ロックバンド「きのこ帝国」。
シューゲイザー・バンドとも言われてるようで、SUPERCARとも似た雰囲気を感じなくもない。
愛読している某ブログで紹介されていたのをきっかけに知り、10月末に発売されたニューアルバム「フェイクワールドワンダーランド」を買ってしまいました。



最初に聴いた「東京」と「クロノスタシス」のインパクトがすごかった。
妙な切なさ漂う東京暮らしの様子にピタッとくる、
個人的代弁バンドがサカナクション以外にあったのか、と震えました。

※個人的代弁バンド


上京して7年が経つけど、とりわけ華やかなわけでもなく、
ただ無意味に忙しくしている気はしている。
そんな風にして日々生きていると感じる鬱憤とかやりきれない日常感を、
見事に代弁してくれていると勝手に思っているバンド(つまり個人的代弁バンド)がサカナクションでした。
で、きのこ帝国もそういう意味で個人的代弁バンド感があるのです。
もっと(勝手なことを)言うと、同じ東京暮らし代弁バンドではあれど、
サカナクションは「対自己」に問いかける歌で、
きのこ帝国は「特定の誰か」を思う歌という気がします。

※きのこ帝国的代弁


上京するとまず基本孤独です。憧れと夢の勢いで出てきたものの、拠り所はない状態。
そういう不安な中でも、自力でどうにか楽しい居場所や誰かと出会い、大事な拠り所になっていくけど、
こんな状態がいつまで続くかもわからないし、明日には皆離れてしまうかもしれない。
という、東京という場所の儚くて不安定なつながりを憂う気持ちが、切ない。




「きみとぼくの関係」と「自分の内面」


そんなきのこ帝国の「フェイクワールドワンダーランド」。
iTunesのレビューにすごいのがあったので、引用させていただく。

きみとぼくの関係と、繊細で個性的でクリエイティブな(と信じている)自分の内面の事だけを考えているのに、良く分かりもしない世界の理不尽や憂鬱にまでしたり顔で口を出し、外はくだらなく汚れた大人が好き勝手をしていると思い込みながら、無意味な物に意味を感じる自分はひょっとして凄いと密かに考えている。……そんな最もみっともない、けれど二度と戻れない季節を思い出します。年を取ったのでしょう。

こういう季節は、誰にも訪れるものなのでしょうか。
自分にもあったあの頃(むしろ今も?)の気持ちを体現したような文章でびっくりしました。

もしこういう感情を、自分以外の多くの皆さんが感じていたとするなら、
そんな皆さんとはぜひ、渋谷直角の本を片手に語り合いたいものです。
敵ばかりだと思っていた世の中には、なんとまあ仲間が多かったのか、と。爆笑しながら。


がんばれ同世代、がんばれ東京暮らし


ちなみにボーカル佐藤さんは今年26歳だそう。
同じ世代がセンチメンタルな若者の視界をうたっているのがまた、親近感を感じたりするのかもしれない。

多くの平凡な(でもどこかで自分は特別だと信じている)若者の心をつかんで離さないバンドが
これからもたくさん出てきてくれたらいいなと、思います。


かしこ。