というのも、この時期上京したばかりのような人たちが、
Loftや無印良品やデパート各所をうろうろしながら、
新しい生活用品やオシャレなカバンや洋服を
ごそっと購入している様子を眺めるのが楽しいからだ。
あと、大学1年生のような子たちが、
初めてあてたようなくるんとしたパーマと、
明るく染めたカラーが初々しい髪の毛を春風になびかせながら、
一張羅の恰好をして大学に通う姿を横目に、
桜散る道を自転車でかっ飛ばすのが楽しいからだ。
こういう新生活のスタートを楽しみに、あるいは不安そうに切り始めている人たちを見ていると、
自分も何となくソワソワとした新鮮な気持ちになるし、昔の自分を思い出すようで懐かしくもある。
あと上着を着ていると少し暑いし空はカラッと晴れているし、
今こそ外でビール飲むべきなのでは?とソワソワしてくる。
と、いろんな意味でソワソワしながら乗り込んだ電車の中でのお話です。
方言抜けきらず(たぶん抜かそうともしていない)、ちょっと垢抜けない様子の若者2人組が、
訝しげに外のホームの様子を眺めて話していた。
「ほら見てみ、みんな『わいは東京人や』って顔して歩いとる、
東京は『わいは東京人や』って顔した人ばっかりでどうかしとるな」
気取った連中ばかりだ、これだから東京ってところは・・・
という居心地の悪さと憧れが入り混じった複雑な感情故の発言なのだろう。
自分にもかつてそんな感情があったような気がして、これまたノスタルジックになったり、
すこし微笑ましく思ったりした。
東京は基本的に(自分も含めて)地方出身者が多い場所だから、
誰しもが少なからずこの「東京の異様さ」を感じたことがあると思う。
しかし驚異の適応能力を発揮して、自己実現への欲望と情熱を燃やしているうちに、
気づいたら自分自身も『わいは東京人や』という顔をして、
「東京の異様さ」を構成する一要素になってしまうものだから、おもしろい。
思えば7年ほど東京で暮らしていることになる。
自分も立派に『わいは東京人や』という顔をしているのだと思うと、我ながらウザさがあるな。
地元がいちばん、田舎こそ我がアイデンティティ、とか言ってたくせに、
今じゃ「吉祥寺の無印良品とテレビ東京さいこう!」とか言ってるので、
ミーハーなところがあるのは否めない。むしろ基本がミーハーだ。
このへんはもはや仕方ないと思って気にしないことにしている。
ひとまず今年は特に環境も変わらず、去年と同じように春を迎えるわけだけど、
いつかまた自分にも新しい環境に飛び込まなきゃいけない時期は来るだろう。
基本的におもしろそうな方にフラフラ流れていくミーハー人間なので、
もしそんな春が来た暁には、新しい環境を前に異常に張り切ったり、
気取った連中をこっそり皮肉るなどして忙しくした後、
やっぱりこっちのローカルラジオ最高!とか言って、
何かしらドヤ顔できたらいいな、と思っている。
今のところ引き続き『わいは東京人や』状態なので、
4月から東京暮らしをスタートする若者たちの浮足立つ様子を見ながら
街歩きをするのがとても楽しみである。
かしこ。